病気やけがで入院した時の自己負担額と公的医療保険制度

公開日:2014年10月3日

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老後の生活費を考える上で、けがや入院をした時の医療費も考えておかないといけません。

現役世代の時には、そもそも病気やけがになることが少ない人が多いですが、高齢になるにつれて病院にお世話になる機会は確実に増えますので、今以上の医療費を見込んでおかないといけません。


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医療機関を利用した際の自己負担割合

日本では公的医療保険制度があるので、病気やけがの治療費は全額自己負担となるわけではありません。

医療費の自己負担割合は3割と覚えている人も多いと思いますが、公的な医療保険制度では年齢によって、自己負担割合が決まっていて、高齢になると自己負担割合は低くなります。

■医療機関を利用した時の自己負担額の割合

年齢 自己負担割合 保険給付割合
小学校入学前 2割 8割
小学校入学~69歳 3割 7割
70~74歳※
(一般)
2割 8割
70~74歳
(現役並み所得者)
3割 7割
75歳以上
(一般)
1割 9割
75歳以上
(現役並み所得者)
3割 7割

※昭和19年4月1日以前生まれの人は1割

現役並みの所得者とは、課税所得が145万円以上の被保険者とされており、課税所得は収入から公的年金等控除、必要経費、基礎控除、給与所得控除などの控除を差し引いた後の金額ですので、額面で言うと386万円相当の収入になります。

日本の平均所得と同じくらいですので、それくらいの収入がある場合には70歳以上であっても医療費の自己負担割合は3割となります。


高額療養費制度の概要

公的医療保険制度があるので、自己負担は1割から3割とかなり負担額が少なくなっていますが、長期の入院などによってそれでも医療費が高額で負担になる場合があります。

そのような場合、日本の公的医療保険制度には高額療養費制度があり、一定額以上の治療費が発生した場合は負担が軽くなります。

■高額療養費のイメージ
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以下の条件を満たした時に、申請をすることで支払った医療費の返還があります。

■高額療養費の条件

  • 被保険者とその家族が同じ月に支払った医療費の合計が自己負担限度額を超えた時

自己負担限度額は年齢や収入によって異なり、以下のようになっています。

■高額療養費の自己負担限度額

年齢 所得区分 自己負担限度額
70歳未満 高所得者
(標準報酬月額53万円以上)
150,000円+(医療費-500,000円)×1%
一般 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
低所得者
(住民税非課税)
35,400円
70歳以上 現役並み所得者
(標準報酬月額28万円以上)
44,400円(通院のみ)
80,100円+(医療費-267,000円)×1%(入院含む)
一般 12,000円(通院のみ)
44,400円(入院含む)
低所得者
(住民税非課税)
8,000円(通院のみ)
15,000円-24,600円(入院含む)

一般的な人であれば、70歳未満であれば80,100円+(医療費-267,000円)×1%の自己負担額があった時に、70歳以上であれば通院のみの場合は12,000円、通院と入院の合算の場合は44,400円が自己負担額の限度額となりますので、それぞれの金額を超える自己負担があった時には高額療養費の申請をするようにしましょう。

なお、高額療養費制度の対象となる治療費は、病院で支払ったお金すべてが含まれるわけではなく、一部高額療養費の対象外となる治療費もあります。

■高額療養費の対象外となる治療費

  • 差額ベッド代
  • 入院時の食事代の一部
  • 先進医療の技術料

差額ベッド代は6名個室のベッドではなく、個室をとった場合にかかる費用です。入院時の食事代は一食250円以上の部分は高額療養費の対象になりません。

また先進医療の技術料なども高額療養費の対象になりません。

高額療養費制度も公的な制度なので、最低限の医療サービスを担保するもので、オプション的につけるサービスについては対象外とする仕組みになっているのですね。


高額療養費制度は加入している公的医療保険によって違う

なお、公的医療保険は職業によって加入する保険が異なっており、それによって高額療養費の上限額などに差があります。

■公的医療保険の種類

保険の種類 職業
健康保険組合 大企業の会社員
協会けんぽ 中小企業の会社員
共済組合 公務員
国民健康保険 自営業者、専業主婦など(上記以外)

※その他にも船員が加入する船員組合などがある

健康保険組合は企業によっていくつか種類があり、一概にサービスの比較はできませんが、一般的に健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険の順に手厚くなっています。

職業に言い換えると、大企業の会社員、中小企業の会社員、自営業者の順に有利になっているといえます。

治療費の自己負担割合に違いはありませんが、高額療養費の上限額などが違いますので、大企業に正社員で勤めると色々有利であるといわれる理由の一つでもあります。

この辺りは年金も同じですね。

ただし、老後の公的医療保険制度という意味ではほとんどの人が国民健康保険になります。ですので、高額療養費については上述した国民健康保険のものが適用されると想定しておくのが良いでしょう。


医療費への備えは必要だけど、まずは公的医療保険制度を押さえる

老後の生活にかかる治療費の参考として、公的医療保険制度を見てきました。

冒頭にも述べた通り、医療費は高齢になるほど高くなるのが一般的ですので、何かしらの備えをしておく必要があります。

そういう意味で医療保険が人気になっていますが、医療保険などはあくまで公的な医療保険でまかないきれないものを保障するという考えで加入する必要があります。

今回紹介した通り、日本の公的医療保険制度は手厚いです。通常の治療費の自己負担割合は少ないですし、治療費が高額になっても高額療養費制度によって自己負担額の返還してもらうこともできます。

結果的に治療費が思ったよりもかからなかったという人もいますので、医療保険に加入する際には、公的な医療保険制度のポイントを押さえて、自分に必要な補償を見極める必要があります。

結果、自己資金でまかない医療保険に加入しないという結論もあると思いますので、まずは公的な医療保険制度についての知識を深めましょう。


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