企業年金の役割・種類と減額リスクに備える方法

公開日:2014年11月5日

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会社に勤めている人の中には公的年金だけでなく、企業が独自に定めている企業年金に加入している人もいます。

企業年金の内容は企業によって異なりますが、企業年金があることで公的年金だけでは足りない老後のお金を豊かにすることができます。

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企業年金と退職金の役割

  • 企業によって異なる退職金や企業年金などの制度を「退職給付制度」といい、公的年金だけでは足りない老後のお金を上乗せしている

企業が従業員の定年後も収入に困らないよう、定めに基づいて退職時にお金を給付する制度を「退職給付制度」といいます。一般的に一時金で受け取るものを「退職金」、年金で支給されるものを「企業年金」といいます。

退職金は社内規定で勤続年数等に応じて支給される金額が決まっており、企業年金は厚生年金基金や確定給付年金、企業型の確定拠出年金など、外部の機関に運用などの事務を任せて運営されています。

労働基準法上は退職給付制度を用意することは義務付けられていないため、制度の有無や給付水準等はすべて企業によって異なります。

退職給付制度は、入社時などに説明を受けていると思いますが、気にしている人はいないので、まずは自分が勤めている会社の退職給付制度の確認をしてみると良いと思います。規定を確認しても良いですし、総務担当の人などに聞くとわかります。

退職金や企業年金の役割は何と言っても公的年金の上乗せです。

公的年金は企業に勤める会社員の人であれば厚生年金を受給することができ、収入によって老後の支給年金額は異なりますが、平均すると月に約15万円が支給されています。

専業主婦(第3号被保険者)の妻がいれば、妻の国民年金を約5万円と考えると、世帯では約20万円程度の収入があることになります。

老後の生活費は月に約25万円が必要と言われ、ゆとりのある生活をするには月に約35万円が必要とも言われており、上記の厚生年金だけでは足りないことになります。

会社員の厚生年金は、国民年金だけの自営業者に比べると大分手厚いですが、十分とも言えない状況です。

公的年金だけでは足りない老後のお金を公的年金に退職金や企業年金を上乗せすることで、老後の従業員の生活を安定させることができ、現役時代は老後の生活の不安をすることなく仕事に没頭することができます。

退職金の水準は企業によって異なりますが、一般的には大きな会社ほど保障が手厚くなっており、大企業であれば2,000万円以上の退職金が給付されることも珍しくありません。

勤続年数が長いほど保障が手厚くなるので、定年退職まで働くモチベーションとなり、日本の終身雇用制にマッチした企業の福利厚生の一環として機能しています。

国も退職給付制度を後押ししており、退職金を一時金で受け取った場合、大きな税制優遇があり、課税所得が大幅に少なくなり支払う税金が少なくすむようになっています。


企業年金の種類

企業年金には、厚生年金基金や確定給付年金、企業型の確定拠出年金(401k)があります。

■企業年金の種類

厚生年金基金

厚生年金基金は厚生年金の一部を民間で運営しているもので、企業が拠出を上乗せすることで厚生年金を上乗せすることができる制度です。

厚生年金基金は、単独の企業で運営しているものから、特定業種の企業で共同で運営している基金、特定の企業を中心にグループ会社など複数の企業で運営している基金など様々な種類があり、2012年3月末時点で562基金があります。

厚生年金に加入している人、すでに年金を受給している人を合わせると700万人を超える人が厚生年金基金を利用しています。

日本の公的年金は3階建てと言われますが、会社員の1階が国民年金、2階部分が厚生年金、そして3階部分がこの厚生年金基金と言われ加入していれば受け取る年金を上乗せすることができます。


確定給付年金

確定給付年金は将来の年金額(給付額)をあらかじめ決まっている企業年金です。給付額から予定利率などを考慮して必要な金額を拠出するタイプの年金です。

年金の支給額や支払い方法は企業によって異なり、退職金のように一時金で受け取れるケースもあります。


企業型の確定拠出年金(401k)

確定拠出年金は、確定給付年金とは逆で、拠出する額をあらかじめ決めておき、従業員自らが運用の指図をして、運用の結果によってはもらえる年金額が増減する、運用の責任を負う年金です。

確定拠出年金には個人型と企業型がありますが、企業が加入して掛け金を拠出する企業型の確定拠出年金が企業年金の一種になります。

確定拠出年金の運営機関ごとに運用商品が複数から選択可能になっていて、従業員は自分で資産の運用配分などを設定して運用していきます。途中で資産配分を変更することもできます。

確定拠出年金の詳細は別の記事で紹介していますので、以下の記事を参考にしてください。


企業年金のリスク

企業年金や退職金は会社員の老後のお金を上乗せしてくれる頼りになる制度ですが、「減額リスク」と「制度が終了するリスク」がある点は理解しておく必要があります。

■企業年金、退職金のリスク

  • 減額リスク
  • 制度が終了するリスク

退職金は退職金規定、企業年金も社内の規定で定められていますが、規定は変更になったり、企業の業績が著しく悪化して企業の存続や従業員の雇用を守る必要が出た場合、労使合意に基づいて退職給付が減額となることがあります。退職金規定に至っては労使合意の義務はありませんので企業側の決定で変更することも可能です。

記憶に新しいところでは、JALが経営破たん時にOB3割、現役社員5割の企業年金の減額が行われました。JALクラスの企業が破たんすることはよく起こるとも言えませんが、自分が勤務していた企業の状態によっては数十%単位で企業年金が減額されることはありえないことではありません。

仮に2,000万円の退職給付を期待していた人がいたとしても、減額が行われ5割カットということになると、あてにしていたお金が1,000万円分も吹っ飛ぶことになります。

あまりあることではありませんが、現実に起こった以上ありえないとも言えないので、企業年金に100%頼るのではなく最悪の場合に備えて自分で何か準備をしておく必要があるといえます。

このような減額リスクに強いのが確定拠出年金です。

他の企業年金がみんなから集めたお金を一緒に運用しているのに対して、確定拠出年金は自分で拠出した金額を自分で運用しているので、自分の年金額が明確に分かれています。勤続3年以上ある人の確定拠出年金は会社都合では減額することができません。

そのため、確定拠出年金は減額リスクのない会社に減らされない年金なのです。

会社の業績がいくら悪化しても、これまで積み立てた分は減ることはないので、全額が個人の資産といえます。

確定拠出年金は、「運用の責任を自己責任として個人に押し付けている」という悪いイメージを持って話される人がいますが、会社が絶対的に信頼できる存在でない今、「自己責任」であることは、逆に会社都合の減額がないというメリットとして捉えることができます。

企業型の確定拠出年金制度が自分の会社にない人は、個人型の確定拠出年金に加入することができますので、企業年金がある人も減額リスクに備える意味で確定拠出年金に加入するのは良い選択だといえます。

退職一時金制度 厚生年金基金
確定給付年金
企業型の確定拠出年金
減額リスク 規定見直しにより労使合意なしで減額が可能 労使合意により減額が可能 3年以上勤続で会社都合の減額なし
運用責任 運用していない 企業年金が運用方針を決定 あり(従業員が運用方針を決定)


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