少子高齢化に対する公的年金の対応と年金改革による負担増加と給付減

公開日:2014年10月31日 最終更新日: 2015年1月19日

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日本では少子高齢化が進んでおり、現役世代が年金世代を支える公的年金制度の財政は厳しさを増しています。

そのような状況のため、年金制度が破たんするという人もいますが、公的年金はどのように少子高齢化に対応しているのでしょうか。


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進む少子高齢化

  • 2013年に生まれた赤ちゃんは102万人で3年連続過去最低
  • 2013年の出生率は1.43で若干増加傾向
  • 2060年には1.2人の現役世代が1人の高齢者を支えるようになる

ご存知の通り、日本では少子高齢化が進んでおり、2013年に日本で生まれた赤ちゃんは102万人で、過去最低の記録を3年連続で更新しています。

1人の女性が一生のうちに何人の子供を産むかを表す合計特殊出生率は2013年に1.43となって、前年から若干上昇していますが、そもそも子供を産む現役世代が減っているので、多少出生率が上がったとしても赤ちゃんの人数は今後ますます減っていくでしょう。

逆に寿命は延びてきていて、男性の寿命は79歳、女性は86歳となっています。

年齢別の人口を表す人口ピラミッドを見ても、高齢者を示す上の方のゾーンがボリュームを増していて、その形はどんどん頭でっかちになっています。

■人口ピラミッドの変化
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出典:国立社会保障・人口問題研究所

年金制度の現役世代の負担がわかる65歳の人口あたりの20歳から64歳の人口も1990年には5.1人だったものが2011年には2.6人と半分近くなり、2060年には1.2人の現役世代で1人と高齢者を支える時代が来ると言われています。

データで見るとぞっとする数字ですね。


公的年金の少子高齢化への対応

このように少子高齢化が進んでいる現状は、公的年金にとっては大きな問題で、年金制度は抜本的な改革を迫られています。そこで2004年に年金制度の改革から、年金財政を安定できるように以下の対応が取られています。

■年金制度の少子化への対応

  • 保険料の値上げ(上限あり)
  • 年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げ
  • 積立金の活用
  • 実質的な給付水準の引き下げ(マクロ経済スライド方式の導入)

保険料の値上げ

まず、国民年金保険料、厚生年金保険料ともに保険料は、2004年から値上げをしています。

一方で現役世代に無制限の負担を強いることはできないという考えで、保険料には一定の上限が設けられています。

計画では2017年までは一貫して上昇して、そこからは上限になるので保険料、保険料率は固定化されます。


国庫負担割合を引き上げ

また年金の財源は保険料収入と過去の積立金と国庫負担額という国のお金からなっています。国庫負担とは平たく言うと税金ですね。

年金改革前まで国庫負担の割合は支給年金額の3分の1でしたが、2004年からは2分の1に引き上げがされています。

国庫負担は税金ですので、国庫負担割合が増えるということは、実質的に私たちの税金の負担が増えることを意味しています。(仮に増税がされていなくても、何かしらのサービスが削減されている)

保険料の負担が上限値で固定されたとしても、国庫負担割合を増やされると、結果的に現役世代の負担は高まることになります。なお、年金生活者も税金は支払っているので、実質的な給付水準を下げることにもなります。


年金積立金の活用

公的年金には保険料のうち年金の支払いにあてられなかった金額を積立金としており、積立金で運用した利益を年金支払いに充てています。

年金積立金は平成25年度末に132兆円が残高としてあり、うち127兆円が年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で運用がされており、この2,3年は積立金の残高も増加傾向にあります。

■年金積立金の残高推移
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出典:GPIF

最近ニュースなどでは、このGPIFで運用されている年金積立金を国内株式などで運用することができるようになると騒がれています。

ニュースの論調は130兆円のお金が株式市場に入ってくれば株価が上がるだろうというものですが、年金積立金の立場から見ると現在安全性の高い資産で運用されている積立金がリスクのある株式で運用されることになります。

もちろんその分儲かる可能性もありますが、年金積立金は減らしてはいけないお金なので、株式の運用は慎重に検討してもらいたいですね。


実質的な給付水準の引き下げ

最後に、年金受給者への実質的な給付水準の引き下げ(マクロ経済スライド方式の導入)も行われます。

これまで支給される年金は、物価の変動にあわせて増減する「物価スライド方式」を取っていましたが、物価の変動だけでなく現役世代の人数や高齢者の寿命の伸びなども考慮して年金支給額を決めるというのがマクロ経済スライド方式です。

上述した通り、現役世代は減って高齢者は増えていきますので、マクロ経済スライド方式を導入すると物価が上昇しても物価ほど年金は増えないことになり、実質的に給付水準を引き下げることになります。

マクロ経済スライド方式は物価が下がった場合には年金支給額を下げないようにしていたので、これまで発動したことはありませんでしたが、2013年からのアベノミクスや円安で物価が上昇しましたので、2015年にはじめてマクロ経済スライド方式が採用されることになります。


保険料の負担増と給付水準を引き下げて対応

  • 公的年金では保険料負担と給付のバランスを取ろうとしている

このように公的年金は現役世代の負担を一部上げつつ、年金の給付水準を引き下げて、保険料負担と給付のバランスを取ろうとしています。

悪いことばかりのように感じる人もいるかもしれませんが、公的年金が現役世代が納めた保険料を高齢者に年金として分配する制度である以上、現役世代の人数が減って高齢者が増えれば、負担が増えて給付が減るのは仕方のないことです。

現在の人口構成で成り立つ年金制度を確立するということが最も大事ですね。

現役世代の視点に立つと、これから資産を形成する層にとっては老後のお金を準備していかないといけないので、公的年金の額はある程度明確にしてもらって途中で突然変わるということだけはないようにしてもらいたいですね。

年金をもうじきもらう人やもらいはじめた人にとっては、これから給付の水準が下がることになるので、計画が崩れてしまう人や、きちんと年金を払っていたのに何でもらえる額が減るんだと考える人もいると思います。

老後になってから大きく稼ぐのは難しいので、何かしらの仕事を見つけるか、出費を抑えるなどして生活をしていかないといけません。

それぞれの世代の人に言い分があると思いますが、みんなが少しずつ我慢・負担して、苦しい年金制度を支えていく必要がありますね。


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